2014年11月28日金曜日

11. ただのサラリーマン

おっさんの額が汗でベタベタしていた。
「あのー」と二人の警備さんに声をかけてみた。返事がない。
「お願いだから、帰らせてください!僕は、僕はただゲームで遊びに来ただけですよ、迷惑をかけるつもりはなかったです!どうか許してください、もう家内も心配している、きっと!僕は普通のサラリーマンですから、帰らせてください!」おっさんは急にあせた。
「サラリーマン?」と一人の警備さんが言い返した。
「そうです、普通の会社員ですよ、本当にどうでもいい人ですから、帰らせてください!」
警備さんたちがしばらく黙っていた。
「どうも怪しいようですね。」と一人がいう。
「かなり怪しいようですね。」ともう一人が賛成する。
おっさんはさらに汗をかいた。警備さんがおっさんを立ち上げて、通路の先の方のドアまでむりやり連れて行った。ドアが開いて、大きくて丸いホールが見えてきた。ホールの金色の壁にはいくつかのドアがあった。警備さんがおっさんを一つのドアまで連れて行って、ドアを開けて、おっさんを白い壁の部屋に投げた。そしてドアを閉めた。おっさんは部屋に一人になった。部屋には家具は一つもなくて、しかも床も硬くて非常に寒かった。それでも、おっさんはずっとゲームしてたせいで眠気を感じて、床に横になってあっという間に寝てしまった。

2014年11月20日木曜日

10. 筋肉美の男

暗闇に目が慣れてきた。薄明かりの見える方向へ向かう。どうやらドアの下から漏れる光のようだ。光の漏れるドアまで辿り着き、ドアの取手を探す。しかし取手はどこにあるのだろうか?押戸か、引き戸なのだろうか?ドアに手のひらを押し付けた瞬間、ドアが上にスライドした。ドアの向こうは壁も床も白い通路のようだ。なんとも近代的なドアだな、とおっさんが思っていると、通路に声が響き渡った。「こら、候補生!訓練が終わっても訓練室を出るなと事前に説明があっただろ!」怒り声が聞こえてくるのはどこかにあるスピーカーのようで、声の主は見つからない。「候補生?なんのことだかさっぱりわからないんですが」と廊下の壁に向かって大きな声で答えるおっさん。すると通路の先の方の壁がするすると上にスライドして、体にぴったりした制服の様なものを着た男が出てきた。背の高さは180センチくらいだろうか、おっさんより20センチほど高い。整ったあごひげをはやしており、年は50歳半ば位だろうか、制服からはこの男の鍛えあげられた筋肉美が見て取れる。

「こら、候補生!なぜ訓練室を…待てよ、オマエは候補生ではないな」そう言い終わる前に制服の男は腰のベルトからスマートフォンのような物を取り出し、おっさんに向かって構えた。銃か何かだろうか。「オマエは何者だ!いったいどうやってここに入ってきた!警備室へ緊急連絡、訓練室前で不審者を発見、至急警備隊を送れ!」、おっさんは一体何のことだかわからず、動揺して汗をかきながらも、撃たれてはたまらんと、両手を頭より上に上げて、敵対心が無いことを示そうとした。制服の男は目にも留まらぬ早さでおっさんの後ろに回ると、おっさんの膝の裏を蹴り、おっさんを跪かせた。次の瞬間にはおっさんは床にうつ伏せになり、両手の自由は手錠のようなもので奪われていた。

その後の20秒間はおっさんには2時間にも感じられた。一体ここはどこなのか?この制服の男は一体誰なのか?これから自分の身には何が起こるのか?妻は果たして許してくれるのか?

バタバタと足音が聞こえてきた。おっさんの目の端には走ってやってきた4人分のブーツが見える。制服の男が厳しい口調で言う、「不審者が訓練室から現れた。無抵抗だが注意を怠るな。二人は不審者を見張れ。後の二人は私はについて来い。訓練室の候補生達の安全を確認してくる。」

2014年11月15日土曜日

9. 暗黒の中

ガガタバーン!!と巨大宇宙船が爆発した。
「やったぞー!」おっさんが喜んでいた。あんなでかいものなんて撃ち落せて、信じられないできことだね。しかし、これだけかな?果たしてこのまま赤い惑星に着星できるのだろうか?もうミサイルもないから、新しい敵が現れたらどうしようもない。それでも、おっさんは赤い惑星に近づく・・・
ピーンピーン!とゲーム機械は急に鳴った。画面は黒くなって、「もっと遊びたい際、コインを入れてください」と映った。おっさんはポケットから100円玉を出そうとするが、もうないようだ。どこかで両替しないと・・でも、おっさんがゲーム機械を立ち上がっても、ゲームセンターは見えるようにならない。真っ暗。
「壊れているかな、この機械?」とおっさんは声に出してみたとたん、そうではなくて、ゲームセンターの電気は完全に消えただけだということに気づいた。先のバイトさんの姿もどこにも見えない。
「すみませーん!」とおっさんが叫んでみる。返事がない。やはりバイトさんがもう帰ってしまったようだ。
「じゃあ、帰るしかないな・・・」とおっさんがため息して、出口に向かってみようとするが、出口はいったいどこなの?非常口の光も見えないもので、おっさんは急にとても不安になった。ゆっくり適当な方向に歩いてみるしかない・・・果たして出れるかな?

2014年11月14日金曜日

8. 弾幕おっさん

このままではゲームに負けてしまう!ゲーマー魂に火が付いたおっさんは、ジョイスティックをしっかりと握りしめ、レーザーを避けるべく宇宙船を操縦し始めた。巨大宇宙船からは次々にレーザーが放たれる。だが対するおっさんも、弾幕系ゲームで鍛えた腕のお陰で、この程度のレーザー攻撃を避けるなんて容易いものとばかりにひょいひょいと敵のレーザーをかいくぐる。だがずっと敵の攻撃を避けているばかりではつまらない。ジョイスティックの親指部分にあるボタンを押せば、自分の乗っている宇宙船からもレーザーが撃てるだろうか?試しに押してみよう。

そのボタンを押した瞬間、自分の宇宙船の底から、低いゴゴゴという音が聞こえた。一瞬「もしかして、自爆ボタンだったか!?」と冷や汗が出たものの、今目の前に見えるのは、巨大宇宙船に向かって一直線に飛んで行くミサイルの姿だった。ミサイルは巨大宇宙船に向かって凄いスピードで飛んでいく。しかしその直線的な動きから軌道を予測されたからだろうか、巨大宇宙船から放たれたレーザーにより、ミサイルは撃ち落されてしまった。「畜生、もう一発どうだ!」今度は巨大宇宙船の横に自機を移動させ、横からミサイルを発射した。ジョイスティックの右横の小さなスクリーンが点滅し、ミサイルの残弾数は1発だと注意を促している。

残念なことに、巨大宇宙船の腹に向けて放たれたミサイルもレーザーの餌食となり、道半ばで爆発してしまった。こうなったら敵にできるだけ近づいて、レーザーの当たらない位置からミサイルをお見舞いしよう。次第に激しさを増していく敵のレーザーをかいくぐりながら巨大宇宙船の下部に近づく。巨大宇宙船に近づくに連れて、自機を狙える敵レーザー砲の数は少なくなる。だが、攻撃回数は減ってもレーザー砲に近づいて居るために、レーザーを避けるのは難しくなってきていた。レーザーが自機をかすめ、機体がガタつく。巨大宇宙船の下腹の部分に、格納庫のような場所が見える。そこに、あと300メートルというところまで近づく。そして最後のミサイルを格納庫に向けて放った。

2014年11月5日水曜日

7.冒険者

ゲーム機械の席に座るとたん、ホログラムで囲まれて、周りのゲームセンターは見えなくなった。その代わりに宇宙の中に浮かんでいるかのような景色になってきた。目の前にあるジョイスティックを捕まると、自分が入っている宇宙船をコントロールできるようだ。しかし、敵も何もないようだから、どのような目的のゲームなんでしょう?とおっさんが考えた。とにかく、あの赤い惑星に近付いてみよう・・・しばらく飛んでいくと、どこかから巨大な宇宙船が現れた。もしかして敵なのか?
「何ものだ?」巨大な宇宙船からのメッセージが画面に映ってくた。なんて答えばいいの?
おっさんが機械に付いているキーボードで打つ。「冒険者です。」
「なぜ俺らの惑星に近づこうとしているんだい?」
「観光したいですから。」
何の反応もない。おっさんはちょっと笑った。もしかしてこのような返事を想像できなかったかもしれない。しかし!いきなり巨大な宇宙船から大きなレーザーが撃たれてきた!おっさんの小さな宇宙船が非常に揺れはじめた。揺れが激しくなり、おっさんが席から落ちそうになった。このゲームはちょっとリアル過ぎじゃない!とおっさんが思うのだが・・・

2014年11月4日火曜日

6. 頼み込み

「お客さーん、閉店時間ですよー!」と、若い男性店員の声。

「もう午前2時なんでー、お店閉めないといけないんすよー。」

なんと、もう午前2時なのか!どうやら5時間以上時を経つのを忘れて遊んでいたようだ。いつの間にか周りの客もいなくなり、店内の電気も一部落とされている。おっさんは家で怒って待っているはずの妻のことを思うと帰りたくなくなった。だが、帰らない訳にはいかない。ちょっと残念な気持ちになりながら、ゲームセンターを出ていこうと思ったその時、見慣れないゲーム機が目にとまった。全てのゲームを遊んだと思っていたが、まだ遊んでいないゲームがひとつだけ残っていた。

店員に掛けあってみる「これでちょっとだけ遊んでから帰っていい?」、「オレも帰らないといけないんすよー。明日大学の授業あるしー」。

だが、ここまできたら引き下がる訳にはいかない。もうこれ以上帰りが遅くなっても、妻の怒りが増えるわけでも減るわけでもない。

「じゃあさ、2000円あげるから、頼むよ、お願いだ」と若者に両手を合わせながら頼むおっさん。

「えー、困るなー。でも2000円かー、ここ時給安いんっすよねー。んじゃあ、ありがたく貰っときます!でもあんまり長く遊ばないでくださいねー」、やった。頼んでみるものだ。

最後のゲームを遊ぶべく、その見たこともないゲーム機に、深呼吸をしてコインを入れたおっさん。しかしこのゲームは他の物とはどこか違っていた…

2014年11月3日月曜日

5. 永遠に続けたい楽しみ

「ゲームセンターじゃねーか!」とおっさんが叫んでしまった。近くにウロウロしている若者たちにちょっと笑われたが、おっさんは気にしなかった。ひょんひょんしながらゲームセンターに入った。どのゲームから始めようか、とおっさんが悩んでいたが、結局シューティングゲームから始めることにした。昔していたシューティングゲームとはちょっと違う感じだが、やはり楽しいなとおっさんが考えた。しかし、大きなゲームセンターにはゲームが多くて一つのゲームだけをすることなんてもったいないと思って、ゲームをやり回り始めた。おっさんは夢中になって、何時間も何時間もゲームをしていた。ただし、楽しさが永遠に続くことはない・・・